廃業理由の上位にランクインする「後継者問題」

整備工場廃業理由の3割を占める後継者問題

廃業を考える理由のほぼトップに君臨する「後継者問題」。3割以上の工場が、後継者問題を理由に廃業しています。

会社もあって、設備も揃っており、顧客もいる。
仕事のベースは揃っていても、大体の社長さんは「息子には継がせたくない」とお考えのようです。
確かに自分がしてきた苦労を子供にさせたくないのは親心でしょう。

流行りの職業はよく見えるけど

自分の子供についてほしい職業を考えると、今流行りのWebデザイナーやAI関連のエンジニア、パティシエやバイオテクノロジーなんてかっこいいですよね。
医者や弁護士みたいな高給取りな職業も捨てがたいですし、やはり安定度抜群の公務員がいい気もしてくる。
隣の芝は青く見えるものですよね。

しかし、楽な仕事はありません。面倒なことがお金になるのです。
自分でできることなら、誰もお金を払ってくれません。
これは、どの業種でも同じと思います。
新しいところに飛び組むよりも、仕事のベースが揃っている方がどれほど楽でしょうか。

自動運転の時代の整備

これから先、自動運転車なんかが走り始めたら…
確かに総務省は2025年にはレベル5の自動運転車を走らせるなんて仰っておりますねぇ…
運転は自動ですが、自動で整備されるわけではありません。
そんな自動車は誰が整備するのでしょう。

自動車整備学校の教科書からポイント交換作業手順は消え、機械式燃料ポンプも分解しません。
ソレックス3連キャリブレーターのバランス取りの神業も振るう機会さえない。
遠くを見つめたくなる気持ちです。

現状でさえ、ハイブリッドモーター制御機能システム、自動ブレーキ作動条件一覧からみる不具合の探求、超低速時に発生する後部席右上部発生源の調査。
そして結果はアセンブリ交換。
これが整備士なのか…と、また遠くを見つめてしまいます。

「その日」は突然やってくるわけではありません

運転席からはドライバーが消え、スマホをかざせば目的地に移動できる。
燃料や電気がなくなれば自動で基地に戻り、お掃除ロボットのように勝手に充電して次の呼び出しに対応する。
タイヤが減ればロボットが交換し、自己診断で不具合箇所を見つけると自動でメーカーがリプログラム対応するような光景。
これは、ある日突然訪れるわけではありません。

確かに弊社へのご相談で一番多いのは、「廃業相談」です。
自動車整備業界では、将来の仕事を悲観的に見られている方がとても多いです。
しかし、自動車と取り巻く様々な事柄が激変していく時代だからこそ、ほかにはない面白さとやりがいがあるのではないでしょうか。

後継者に首を傾げさせる問いかけ

後継者がお子さんの場合、私はこう締めくくります。
「あなたの体は自動車整備でできていますよ。」
大体の人が首を傾げますが、私はその時に席を立つようにしてます。

答えは、お会いした時に。